「〜させていただいております」という表現を耳にすることがある。あまり好きな言い回しではないし、多くの場合それに対する感想は、「別に誰の許可を得る必要があるわけでもないだろうに」というものだ。そうした言い方を日々聞かされているせいか、うっかり自分でも口にしてしまうことがあり、そのたびに気持ち悪さを覚える。まるでベタベタしたものを踏んでしまい、歩くたびにネチャネチャと音がするような、不快な感覚である。

そんな必要はまったくないのに、正体のはっきりしない何かにビクビクしながら喋っているようになってしまうのはなぜだろう。それがいわゆる「空気」というものなのだろう。気持ちのいいものではないのは確かだ。

自分の顔に笑顔のお面を貼りつけて、誰からも文句を言われないようにとばかり気にして暮らすのは、決して楽しいものではない。できればそんなことはしたくないし、する必要もないと思っているのだが、気がつけばそうなってしまう。これもまた、この時代の「空気」なのかもしれない。

もっとも、私ももう十分に年を重ねてきた。そろそろ「初老」と呼ぶのも憚られるような年齢である。そんな歳になってまで、なお足を引っ張られ続けるのは御免だ。実際のところ、私ごときが何を言ったところで、大層なことが起こるわけでもあるまい。

これまで、あまり人並みのことをしてこなかったので、文章を書かなければならない場面は多くなかった。ところが、このたび新しいことを始めようとしていて、人に説明する必要に迫られている。慣れない書類作りに四苦八苦しながらも、どうにか「まあ順当なもの」との評価をいただけた。そうなると、つい調子に乗るのである。放置していたこのブログを再開してみようか、などと考え始めたのだ。

で、再開するにあたっては、これまでと何かを変えてみたい。「シン」だか「ニュー」だか知らないが、文体も変えて、立派な因業爺を目指してみようと思う。化け物を恐れるように気ばかり使って書くのはもうやめだ。文体も「です・ます」ではなく「だ・である」にして、はっきり言い切ることにする。自分の文章がどうにも煮えきらないことに辟易していたので、ちょうどいい機会だ。過去の文をご存じの方には人が変わったように見えるかもしれないが、書き手は同じで、中身も変わってはいない。

秋学期以降、授業とレッスンの間に二時間弱の空き時間ができることになった。この時間を使って文章を綴る練習をしてみようと思う。ただ、私が持続力に乏しいことは周知の事実だろう。だから大言壮語は避けて、今はそのような気分であるとだけ記しておく。

というわけで、またこちらにも何某か「書かせていただきます」。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です