ウォーター・シュート
(ホートン・ライブラリー)

19世紀の末から20世紀初頭、フランスにエリック・サティという作曲家がいました。どう考えてもあまり友達にしたいタイプの人ではなかったようですが、作品そのものだけではなく音楽のあり方というものについても、現代につながるところがあったりして、色々と興味深い人ではあります。

エリック・サティの作品に「スポーツと気晴らし」というタイトルのピアノ小曲集があります。

この小品集は、パリのルシアン・ヴォージュ社という高級婦人雑誌を出版していた会社の、シャルル・マルタンの描いた風俗画集の絵に1曲ずつピアノの曲を添えるという企画から生まれたものでした。20枚の水彩画それぞれに20曲の小品と序曲を加えた作品集が1914年に作曲されています。

この絵画と音楽を合わせた企画は、最初に当時売れっ子だったストラヴィンスキー に依頼されたらしいのですけれど、ギャラが安すぎるということで断られて、サティに声がかかったようです。サティは逆にギャラが高すぎると言って、値下げ交渉をしてこの仕事を請け負ったらしいです。サティが音楽について言ってたことからすると、そうするのもわからないでもないのですが、まぁ、それにしても変わった人ですよね。

もうすぐ開催されようとしている、大きなスポーツの大会のことを考えていて、この曲のタイトルを思い出していました。

「スポーツと気晴らし」

自分でやる方に関しては、年に数回クレー撃ちに行くぐらいのことしか無いんですけど、スポーツ観戦は割と熱心にしているほうじゃないかと思っていたのですが、これまでの通りに気楽に楽しめなくなってしまってます。なんだか残念です。

音楽が素晴らしいものだからといっても、隣の部屋で午前3時からドラムの演奏を始められたらちょっと困りますよね。寝られないし。「この演奏はエルヴィン・ジョーンズに匹敵する素晴らしいグルーヴなんです。この演奏を通して、この音楽を耳にするみなさんに感動と勇気を与えたいと思うのです!」って言われてもねぇ。

私は何十年も音楽を中心にして生きてきて、音楽というものは不可欠で、自分にとってはそれなしで生きていけないのだと思ってますけど、それでもそんなことされたら、うるさいからやめろって怒鳴り込みに行くと思いますよ。大体、感動するなんていうのは情動ですから、自分でするもんで、誰かにさせてもらうことのできるものではないでしょうしね。

色々なリスクがある状況を無視して、そのイベントには直接関係ない人々の社会生活に犠牲を強いて、しかしどうやら仕切っている人達は実は大してそんなに競技スポーツに対して深い思い入れがあるようには感じられないという状態に、ちょっとうんざりしてきています。本当にそのイベントを成功させたいと願っているのだとすれば、もうちょっといろいろ一生懸命にやらないとダメでしょう。

開会式も、あんな形で関わる人が辞めていった後、どうするんだろうかと思っていたら、音楽担当者の過去の行状が問題視されています。それはそうなりますよね。何で頼んだんだろう、どうして受けたんだろう、という感じですけど。

東京開催が決まった時から、きっと期間中は不便なことばっかりになりそうだから、どこかに引っ込んで文句言いながらテレビでは観戦するみたいなことにしようと思ってたんですけどね。何だかいろいろ、思っていたのとは違う形になってしまいました。それでなくてもだらだら続く感染症対策にウンザリしているんですけれど、本当に始まるんですか?今からでもやめといたほうがいいんじゃないかなぁ。

「スポーツと気晴らし」に2件のコメントがあります
  1. 僕はSatieは好きだと思っていたのですが、勉強不足で「スポーツと気晴らし」、ぜんぜん知りませんでした。興味を持ったので高橋アキさんという人のアルバムを買いました。さきほどamazon から届いたので今夜さっそく聴こうと思います。

    1. いつも読んでいただいてありがとうございます!
      またゆっくりお話しできれば嬉しいです。もうちょっと状況良くなりましたら、是非に…。

      よろしくお願いいたします!

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